生活保護自立支援プログラムの活用① ~策定と援助

生活保護自立支援プログラムの活用

編著者 布川日佐史
著者 池谷秀登/田中義一/奥森祥陽/中囿桐代

■――どんな本

支援する人と地位の特性にあわせた生活保護自立支援プログラムの積極的な取組事例と考え方。資料も豊富に掲載。

A5判/並製/248頁
ISBN4-88116-086-9
定価 2,500円+税
発行 山吹書店 2006年
発売 績文堂

■――目次

はじめに―いま、なぜ自立支援プログラムか  池谷秀登
第1章  生活保護における自立支援の展開の検証  布川日佐史
第2章  日常生活自立・社会生活自立を重視した支援  池谷秀登
―板橋区赤塚福祉事務所の取り組み
第3章  NPOを活用した基本的生活習慣確立のための支援  田中義一
―新宿区福祉事務所における「被保護者自立促進事業」への取り組み
第4章  5年先、10年先をみすえ、高い水準の就労自立をめざした支援  奥森祥陽
―京都府山城北福祉の取り組み
第5章  生活保護受給母子世帯と「自立」支援  中囿桐代
-釧路市での調査を事例として
むすびにかえて―問題提起  布川日佐史

■――著者紹介

布川日佐史(ふかわ・ひさし)

静岡大学人文学部教授。労働経済論専攻。
厚生労働省社会保障審議会福祉部会生活保護の在り方に関する専門委員会(2003年8月~2004年12月)専門委員。
共著に『生活保護「改革」の焦点は何か』(あけび書房、2004年)、編著に『雇用政策と公的扶助の交錯』(御茶の水書房、2002年)。
〈読者へのメッセージ〉
本書は自立支援の積極的取り組みの事例を3つとりあげました。
ほかでも前向きの実践が各地で始まっています。
これらを生かし、生活保護制度の改善につなげなければなりません。
「水際作戦」など福祉事務所の違法な運用への批判を強めなければなりません。ただし、それが現場の職員を悪者にするだけで終わってはなりません。
現場職員の積極的な実践と、福祉事務所の外からの批判・監視とがうまく重なれば、制度改善に向けた大きな力になると思います。

池谷秀登(いけたに・ひでと)

板橋区内の福祉事務所にて生活保護ケースワーカー。
〈読者へのメッセージ〉
いま、生活保護制度についての議論がさまざまな立場から提起されています。
また、福祉事務所と生活保護ケースワーカーを取り巻く環境も厳しいものがあります。
これらの諸問題は、保護受給の当事者と現場のケースワーカーが目の当たりにしています。
そうであれば、私たちケースワーカーには、自分たちの仕事を見直し、現在の日本社会に有効な生活保護制度をどのように構築、機能させていくのかが問われているのではないかと思います。
毎日の忙しさの中で流されてしまいがちになりますが、自立支援プログラムの提起は、私たちにこれらの問題を考える機会を具体的に与えてくれたと思います。
受け身ではなく、自分たちの問題として自立支援プログラムに向き合う必要があるのではないでしょうか。

田中 義一(たなか・よしかず)

新宿区生活福祉課生活福祉第二係長(査察指導員)。
〈読者へのメッセージ〉
「自立支援プログラム」をより一層活用していくためには、被保護者の「生活の質の向上」についても考える必要があると思います。
新宿区における取り組みが、その参考となれば幸甚です。

奥森 祥陽(おくもり・よしはる)

生活保護ケースワーカー。
〈読者へのメッセージ〉
小さな郡部福祉事務所での自立支援の取り組みを報告させていただきました。 社会保障、社会福祉の分野での公的責任の放棄、市場化の拡大が一気に進んでいます。 そうしたなかで福祉事務所(職員)による違法行為、人権侵害が引き起こされています。私たちの職場での自立支援の取り組みは、こうした大きな流れに抗うには、まだまだ小さな取り組みにしかすぎません。 しかし、生活保護の自立支援プログラムを活用した前向きな実践が全国に広がるならば、真の意味で「利用しやすく出やすい」生活保護制度へと変えていけると信じています。あきらめることなく、利用者とともに歩んでいく生活保護の自立支援をみなさんとともに作っていきたいと思います。

中囿 桐代(なかぞの・きりよ)

釧路公立大学経済学部教授。労働経済論、社会保障論、労働政策担当。
おもな論文に『「自立的」中小企業の柔軟性と労働・地域』学位請求論文(2001年)、「在宅ワーカーのネットワークと技能教育」(『釧路公立大学地域研究』第13号、2004年)。
〈読者へのメッセージ〉
生活保護の受給、非受給にかかわらず母子世帯のお母さんと子どもたちが安心して生活できる福祉サービスがそれぞれの地域で構築されるよう、私の研究が役立てればと思っています。
母子世帯のお母さんが暮らしやすい社会は女性にとって、もちろん男性にとっても安心して生活できる社会だと思います。

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